香川県内盆栽輸出、円安追い風 EU向け、1月本格出荷 販売額倍増の見通しも
黒松盆栽の欧州連合(EU)向け輸出が解禁され、来年1月ごろから本格的な出荷が始まる。松盆栽は高松市の鬼無、国分寺地区が全国シェアの約8割を誇る一大産地。生産量の半数以上を占める黒松の輸出解禁で、松盆栽の輸出拡大が期待される上、現在は円安が追い風となり、市内生産農家の中では輸出販売が昨年から倍増するとの見通しも出ている。
高松盆栽輸出振興会によると、香川県内の生産農家は60軒前後。松盆栽は黒松の栽培が多く、このほかに五葉松や錦松が中心となっている。EU向け輸出量は増加傾向にあり、黒松の含まれていない2021年は約2600鉢だった。
黒松盆栽のEU向け輸出は、県の研究チームなどが病害虫対策を進めたことで20年10月に解禁。EUの検疫要求を満たす方法で2年間育てる必要や、輸出後3カ月間の隔離期間があり、生産農家が12月から輸出届け出をした後、来年1月ごろに最初の出荷を見込んでいる。
松盆栽愛好家の多いEUへの輸出解禁は、県も生産者も流通量拡大への期待が大きく、9月に県などが高松市内で開催した商談会では、オランダとスペインのバイヤーらが買い付けを進め、県の想定を超す約500鉢の取引が決まった。
EUを含む海外バイヤーは今春から来県しており、ある生産農家は商談で1鉢20万~40万円の買い付けが増えたと指摘。「従来は1万~2万円が大半。金額面では円安がプラスに働き、以前は仕入れをちゅうちょしていた高額品が求められている」とし、輸出品の販売総額は昨年の1・5~2倍に増えると予測する。
「香川の盆栽業界にとって円安が追い風となっているのは確か」と認めるのは県盆栽生産振興協議会で長く会長を務めた小西幸彦さん(81)。一方で、県の担当者は「燃料費や資材の高騰によって輸送費も非常に高い。黒松輸出と円安の相乗効果がコスト増で打ち消されてしまうことが懸念される」としている。