残したい技(4)日々の丹精を代々継承
香川県高松市鬼無町、神高松寿園3代目の神高藤義さん(77)は、香川県の盆栽界を代表する名伯楽だ。この道60年のキャリアを誇り、盆栽を通して内外の著名人との付き合いもある。いいものを慈しみながら育てるのが神高さんのやり方で、同園には長く丹精した銘樹が並んでいる。
基本は日常管理
神高さんが一番気になる樹が同園にある。1975年4月29日、父の故与一さんが盆栽振興功労で勲六等瑞宝章を受けた祝賀会に飾った黒松だ。初めて亡父が褒めてくれた樹で、熊本県から手に入れた時は、1人で運んだが、今では2人がかりで動かすのも大変なほどに成長している。根元の見事なシャリから判断すると、山採りしてから150年以上の歳月が経過していると推定されている。
第45回国風展に出した錦松も以来41年の風雪を重ねて、得も言われぬ風情を醸している。
神高さんに管理のコツを尋ねると「水やりと施肥、消毒に気をつけ、葉の隙間を開けて日当たりをよくすること」と日常管理の大切さを教えてくれた。
整姿も1回でやるのではなく、何段階にも分けて構想を練るといいという。やはり時代と地道さに勝るものはないようだ。
孫も盆栽の道へ
神高さんには最近、うれしいことがある。長男で4代目の恵二さん(52)=県鬼無植木盆栽センター組合長=に続いて、今春大学を卒業した孫の孝平さん(22)が、5代目継承を目指して九州の名園で盆栽修業に入った。
「孫と一緒に仕事ができるのはうれしい。親方の元でしっかり学んでほしいが、帰ってくるまで元気で頑張らないと…」と相好を崩す。3代が盆栽に携わるのは最近では珍しい。大きな楽しみが生まれて、神高さんの日常はますます充実してくることだろう。
(ライター・羽野茂雄)