輸出に備える 技と心を世界に伝える
昨年行われたアジア太平洋盆栽水石高松大会(ASPAC高松)には海外から多くの愛好家が来場し、外国での盆栽人気がクローズアップされた。30年以上にわたって盆栽輸出に取り組む高松市国分寺町、山地山松園の山地宏美さん(59)は年明け早々、輸出の準備に追われている。
適期は冬場
米国やアジアへの盆栽輸出は、根周りの土の除去が義務付けられている。土の洗い流しは植物が休眠する冬場が適期だ。注文を受けると、鉢から樹を抜いて千枚通しなどで土を落とす。さらに動力噴霧器の強い水圧で土を完全に洗い流す。
盆栽は生き物であるため、輸出の手順には当然スピードが要求される。土を洗い落とした樹は、検疫を終えると水ゴケで根を保護し、運送業者と連携し空港へ。海外の荷受人とも密に連絡し、現地でも迅速な植え付け処置を行っている。
山地さんが輸出する樹は、活着率がよいと喜ばれているそうだ。「若い根を傷つけないよう丁寧に扱うのがコツ。サツキやフジなどの雑木類は土を除去しても強いが、根の数が少ない松は神経を使います」と話す。
外国人に指導
山地さんは、長年の輸出経験などで海外にも知己が多い。ASPAC高松でも得意の英語を生かしてさまざまな場面で活躍した。山松園を訪れる外国人も多い。
山地さんは2012年1月18日午後、高松市のアイパル香川で、外国語指導助手(ALT)三十数人を対象に、異文化体験として日本文化の盆栽を教えた。
「ASPAC高松の盛り上がりで、外国の盆栽熱が高まっている。ALTは将来母国に帰って活躍する人たちばかり。松盆栽生産日本一の高松の歴史を紹介し、実際に五葉松の針金掛けを体験してもらいます。彼らにはぜひ、松盆栽や高松の魅力を母国で伝えてもらいたい」と張りきっている。
(ライター・羽野茂雄)