MENU

盆栽主義

鉢の中の小宇宙・盆栽の魅力に迫る地元四国新聞の連載記事

コレクター 「おかげでどこも行けません」

2011年8月25日

 2007年の第20回グリーンフェスタ国分寺でグランプリに当たる文部科学大臣賞を受けた黒松「豊昇(とよのぼり)」は、香川県高松市牟礼町の浜端豊行さん(71)が所蔵している。高台にある家には約千鉢の松柏や雑木が並び、日々の丹精がうかがわれる。

「豊昇」の世話をする浜端豊行さん
「豊昇」の世話をする浜端豊行さん

収集歴は40年

 大島青松園で38年間、ボイラー技士を務めて、2000年に退職した浜端さん。大島での宿舎住まいの時から盆栽に親しみ、同園で調理師をしていた兄末一さん(故人)と島にある松を盆栽に仕立て始めた。

 二人は在職中から香川県高松市国分寺町、清寿園の平松清さん(62)と知り合い、盆栽の教えを請うようになった。豊行さんが退職記念に平松さんから購入した黒松が、7年後のグリーンフェスタで文部科学大臣賞に輝くことになった。

 この木は現在、豊行さんの庭の中央に鎮座している。受賞から4年が経過し、堂々とした太幹、根張り、立ち上がりの力強さ、コケ順や図柄の良さは、さらに趣を増している。末一さんも2回、文部科学大臣賞を受けており、兄弟そろっての受賞は快挙だ。

黒松「豊昇」
黒松「豊昇」

プロの技に感服

 独学で盆栽を楽しんできた豊行さんは、平松さんの技術に衝撃を覚えた。「植え替え、手入れの仕方、針金の掛け方も全然違う」と脱帽。以来、針金掛けに興味を持ち、「松はもちろん雑木でも何でも針金を掛けて楽しんでいます」と話す。

 自宅に盆栽の仕事場を作るほどの打ち込みようで、鉢も年々増えている。平松さんは「好奇心が強く観察力が鋭いので、どんどんうまくなるはずです」と温かく見守っている。

丹精した盆栽が並ぶ庭
丹精した盆栽が並ぶ庭=香川県高松市牟礼町

 退職後は、1日5~6時間は盆栽の世話をする豊行さん。「まるで盆栽バカです。おかげでどこも行けません」と嘆くが、顔は笑っている。文部科学大臣賞の次は、もう一つの大臣賞である環境大臣賞が目標だ。

(ライター・羽野茂雄)