黒松寿八つ房「千寿丸」 手軽に楽しめ海外でも人気
香川県高松市国分寺町、綾松園の綾田正さん(75)と正人さん(50)父子は黒松寿八つ房を培養している。12年前、正さんが黒松寿の突然変異で上部の一枝だけが枝変わりして八つ房になったものを自園で見つけた。名付けて「千寿丸」。同園には下部が寿で上部が八つ房の親木が育っている。
早い樹形づくり
「千寿丸」は、八つ房で芽が多く、枝づくりが簡単、葉が短くて太く緑が濃いなど利点が多い。樹形ができるのが早いため、手軽に楽しめる。海外でも人気が高く、特に小品に適しているという。
接ぎ木の名手として知られる正さんは、専ら接ぎ木で「千寿丸」を増殖してきた。根の生え際に接ぐ「低接ぎ」の技術だ。毎年2月から3月が接ぎ木のシーズン。素材づくりに主力を置く同園では、2年生の黒松に接いだ苗をポットで育てて翌年の秋に出荷するのが通常だ。
接ぎ木をして2年後に鉢上げし、園で培養する「千寿丸」もある。樹齢10年にもなると、幹構えも堂々としたものになる。
名品や挿し木に
正人さんはこれまで、正さんが接いだ苗木の整姿を担当してきた。最近では、正さんから後継者として接ぎ木の技術も伝授されている。二人は「ある程度まで素材を育てて、後は高度な技術を持った人に提供するのが私たちの役目」と口をそろえるものの、正人さんは将来像も描いている。
正さんが10年ほど前に、古い黒松の台木に接いだ「千寿丸」がある。正人さんがハサミを入れながら育ててきたが、こうした完成品づくりも、今後の仕事として構想に入っている。もう一つは、挿し木による増殖法の確立だ。正人さんは「挿し木は接ぎ目がない分だけ接ぎ木より格が上だ。台木もいらない。ただ、葉の太い松は根を下ろしにくいようだ」と話している。
(ライター・羽野茂雄)