若手後継者 畑の管理で着実に成長
香川県高松市鬼無町の北谷養盛園4代目北谷隆一さん(30)は、県内の盆栽業界では数少ない若手後継者である。父和彦さんのもとで修業を積んで13年、徐々に得意技を増やしている。最近は、畑での管理の作業に追われている。
樹にやさしく
古い樹(き)を畑に長く置き、針金を掛けずにハサミで整姿するのが同園の特徴だ。北谷さんは「畑は鉢の中より栄養があり、根も自由に張れる。樹にはやさしいと思う」と話す。広い畑には、整姿を待つ黒松や錦松が3千本ほど並んでいる。
北谷さんは、春の鉢上げや初夏の芽摘みなど、盆栽にとって避けられない作業の時期以外は、年間を通して畑で剪定(せんてい)を続けている。その作業を見せてもらった。
淡路産の山採りで、推定樹齢約60年の黒松。前回の剪定から2年が経過、葉は茂り、ロウソク芽も伸び放題になってきた。枝が混んで幹まで陽光が十分に届いていない。北谷さんは、徹底的に刈り込んでいく。樹が成長期にある今ごろは、多少きつめの剪定でも大丈夫とのことである。
芽吹きも期待
作業を始めて約30分。黒松はすっきり絞り込まれ、幹への日当たりも格段に向上した。畑に置いておく利点は他にもある。剪定でギュッと追い込んでおくと、鉢では考えられない芽吹きも期待できる。事実、畑に植わったまま昨年冬に刈り込んだ黒松からは、新しい芽が吹いていた。芽を増やしてから鉢に上げ、時代を乗せて柔らかい風情に仕上げるのが狙いだ。
「剪定で切る枝と残す枝の判断が難しいが、樹が大量にあることを幸いに、失敗を恐れず挑戦している。地元に何でも教えてくれる先生がいっぱいいるのでありがたい」。
若い北谷さんは、先輩たちに見守られながら、着実に腕を磨いている。
(ライター・羽野茂雄)