名品の絞り込み 美しさ維持し樹格向上
国風展や大観展など、日本を代表する盆栽展に出展した名品は、その後の管理が欠かせない。香川県高松市国分寺町の春松園に、昨年の国風展に展示した黒松が、運び込まれてきた。樹高65センチ、幅90センチ、推定樹齢150年の山採りの古木だ。同園の平松浩二さんが、この木に5日ほどかかりきりでメンテナンスに努めた。
針金で締める
木は、幹肌の荒れ、幹の自然の動き、そして圧倒的な古木感など、国風展入選作ならではの迫力がある。所蔵者は、倉敷市の斉藤晃久さん。昨年11月の大観展でも文部科学大臣賞を受けた愛好家である。
日本盆栽協会発行の専門誌『盆栽春秋』の表紙を飾ったこともある名木だが、昨年2月の国風展から10カ月が経過して、全体の姿が持ち上がり、もっこりした感じが漂っていた。
生きている盆栽は、時間とともに徐々に形が崩れていく。形を維持するには定期的な締め込みが必要だ。
平松さんは、木のシャープさを取り戻すため、不要な枝を落とし、全体に針金を掛けて絞り込んだ。
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丁寧な手作業
平松さんは、太さの違う針金10種類以上を使い、枝の一つ一つを曲げていく丁寧な手作業を繰り返した。下から順に、太い枝から細い枝へ気の遠くなるような仕事だ。「木が古いから枝が裂けないよう気を使った。全国的に知られた名品で、責任も感じた」と、完成後は胸をなでおろしていた。
木は、樹高60センチ、幅77センチに絞り込まれた。国風展で高く評価された「堂々とした大きな根張り、屈曲する幹、荒れた樹肌、整った葉組み」などがよく見えるように復活した。
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この木は愛好家の元に帰り、4~5年針金を掛けたまま培養し、針金が枝に食い込み気味になったら外す。こうして名木の樹格が一段と高まっていく。
(ライター・羽野茂雄)