水石の楽しみ ”幽玄の世界”を味わって
水石は、盆栽とは車の両輪のように位置づけられながら、名石の出る河川の少ない四国ではなじみが薄いジャンルだ。香川国風盆栽会長の村下忠さん(72)=香川県高松市西山崎町=は水石の雅道山本流師範でもあり、村下一村の号を持つ。村下さんに水石の魅力を聞いた。
美の五大要素
水石の特徴は、自然の石をそのまま愛(め)でることだ。基本的に加工はしない。それだけに、自然の石を探す探石、石に時代を乗せる養石、愛好家同士の情報交換なども大切な作業だ。
鑑賞のポイントは、形、質、色に加え、肌合い、時代が五大要素とされる。形は、何らかの自然景観を連想させるものがいい。遠い山容を凝縮したような「遠山石(とおやまいし)」、海上の岩や打ち寄せる波を思わせる「岩潟石(いわがたいし)」、水たまりのようなくぼみがある「溜(たま)り石」、滝が流れ落ちるように見える「滝石」、厳しい断がい絶壁にも似た「段石」、田舎の古民家のような「茅舎石(くずやいし)」、人物や動物に似た「姿石」などが代表的なものである。
大自然を感じる
高松市の香南歴史民俗郷土館で、来年1月10日まで、水石展が開かれている。日本水石協会から重要水石に認定された加茂川産の岩潟石をはじめ、梓川産の滝石、瀬田川産の茅舎石など、村下さん所蔵の20点を展示している。
台座や水盤に乗った水石は、小さいながらも、大自然の営みを雄弁に物語っている。「常念の滝」「親鸞」「初釜」などタイトルと作品を比較しながら鑑賞するのも面白い。香川では珍しい本格的な展示会、ぜひ足を運ぼう。
村下さんは「水石は、約束事を踏まえ、作法を守って飾ると、必ずしも高価なものでなくても、各自で”幽玄の世界”が楽しめます。盆栽や山野草の隅に置いても楽しいでしょう。気軽に水石に親しんでください」と呼び掛けている。
(ライター・羽野茂雄)