若手盆栽家(上)得意分野の開拓に全力
盆栽農家は後継者の問題で悩むケースが多いが、若い後継者が頑張っているところもある。高松市鬼無町、北谷養盛園の北谷隆一さん(28)は、地元最年少クラスの後継者として注目されている。
後継は自然に
幼いときから祖父、父の盆栽づくりを眺めて育った隆一さんが、盆栽農家を継いだのは自然の成り行きだった。「大人になったら自分も盆栽をやるんだと漠然と思っていたから、違和感はなかった」と話す。すでに経験は12年、祖父は故人となったが、父で3代目の和彦さん(56)とともに園を守っている。
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「父は伝統を重んじるタイプだが、自分はいいことは何でも取り入れて挑戦し、いつか自分なりの形をつくっていきたい」。鬼無、国分寺両町には指導を仰ぐ”先生”も多く、「何でも教えてくれるのがありがたい」と感謝している。
ベテラン盆栽作家にとっても、謙虚な隆一さんはかわいい存在に違いない。
やがて管理のプロに
隆一さんが目指すのは、基本知識や技術の向上、諸先輩の話を聞きながら勉強し、生き残る武器となる得意分野を増やすことだ。そこで、おぼろげながら考えているのが管理のプロである。盆栽は針金かけや剪定[せんてい]など作る作業が花形だが、美しい形を維持する管理も大切だ。
経験や実践不足を補うため、父の下で数をこなしながら、いい木を見たり展示会に足を運んで目を肥やすよう心がけている。
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夢は先々代譲りの黒松をうまく管理していい芽を出すこと。そのため、今は何もかも取り入れる段階だと自覚している。
「盆栽は忍耐。逃げ出したくなったら、趣味が高じて庭に整備した投球練習場で好きな野球を楽しんでいます」と若者らしい笑顔をこぼした。
(ライター・羽野茂雄)