小品飾り 自由に組み合わせ楽しむ
小さくても古木感、大木感がある小品盆栽。置く場所や持ち運びの手軽さから人気は上昇している。樹高20センチ以下が中心で、一品でも美しいが、席飾りにすると魅力はさらに増す。香川県高松市国分寺町、春松園で若い女性に自由な発想で飾り付けをしてもらった。
ワビ、サビの心を
初めて小品飾りに挑戦したのは、高松市鬼無町の鬼無智子さん。江戸末期から明治にかけて活躍し、香川県特産の盆栽の基礎を築いた鬼無甚三郎翁(1834~1907)の子孫に当たる。指導は同園4代目で全日本小品盆栽協会理事の平松浩二さん。
鬼無さんは、まず飾る木の選択に悩んだ。卓からあふれるほどの木を選びがちで、バランスがうまく取れない。そこで、平松さんが「空間も大切に。いっぱいに飾ると、ワビ、サビの境地が損なわれますよ」とアドバイス。鬼無さんは、木を選び直し、位置を何度も変え、卓の上に台を置いたり外したりしながらも、さわやかな夏の小品飾りを完成させた。
季節ごとに妙味
鬼無さんは、樹齢半世紀ほどの黒松を主木に、チョウジュバイ、ピラカンサ、シンパク、赤松、添えの草にツメレンゲを選んで飾り付けを行った。平松さんは「木の大小のバランスがよく、全体の調和が取れている。樹形の流れから考えると、主木の黒松と右端の赤松を変えたら、さらによくなるのでは」と評価した。
鬼無さんは「多くの木を飾って華やかにしようと思ったけど、空間やシンプルさが風情を醸し出すことを教わり、イメージが変わりました。違う季節にもやってみたい」と話していた。
夏は鮮やかな緑に涼感がある。紅葉の秋や花の春は目にもまぶしい。冬は葉を落とした寒樹の姿が捨てがたい。小品飾りは、四季それぞれに楽しみがある。
(ライター・羽野茂雄)