錦松の挿し木 小品仕立ての人気が上昇
香川県綾川町の尾松錦生園4代目、尾松和人さん(45)は挿し木で多数の錦松を育てている。穂木を挿し木して7~8年培養し、関東方面を中心に出荷する。樹高13~16センチの小品が人気で、7センチほどの豆盆栽の注文もあるという。
銘は「富士」
錦生園は創作盆栽で知られる。いずれも故人となったが、初代力松さんが1928(昭和3)年に「南海」、2代目肇さんが1959(昭和34)年に「富士」と「大和」の銘を付けた錦松のオリジナル品種を世に出している。
和人さんと3代目の康雄さん(72)が育てる錦松は、すべて「富士」。八つ房系で芽吹きがよく、早生(わせ)で早く皮がはぜる特徴がある。自園の畑に20本ほどある樹齢約60年の「富士」の親木から穂木を採り、挿し木している。毎年7千本ほど挿し、活着率は7割程度とのこと。4月頭に穂木をベッドに挿して3年間培養し、切り込んで畑へ移す。畑で2年育て、再び切り込んで鉢上げ、その年の秋か翌年に出荷している。
錦松に五葉松を接ぐ
同園では初代から錦松の接木を主力にしてきたが、二十数年前から挿し木に特化した。接木に比べると手間がかからず、大量生産にも向く作業効率がよいことなどが理由だ。15年前に脱サラして家業を継いだ和人さんも、挿し木に打ち込んでいる。
和人さんは、錦松の根上がりも仕立てている。5年ほど前から接木も手掛ける。それも、錦松の台木に黒松寿や五葉松を接ぐなど、変わり木を楽しんでいる。台木は挿し木で作る。
和人さんは「錦松は古木感が出やすく、五葉松は手間がかからない。両方の利点を合わせると素晴らしい性質の木ができるのでは。世話が簡単で扱いやすい。今後増やしていきたい」と張り切っている。
(ライター・羽野茂雄)