水石の魅力 静寂の中にみなぎる動感
盆栽展で水盤に石を飾った作品を見かける。これが水石である。森や林の景色を鉢に凝縮する盆栽に対して、水石は水辺の風景を表現し、静寂の中にも驚くほどの動感を秘めている。盆栽と両輪をなすような存在で、2011年に高松市で開催される大会も「アジア太平洋盆栽水石大会」と銘打たれている。
旭水会の活動
川原や山に転がっている石を鉢や台に飾り、大自然の景色に見立て、枯淡の境地を鑑賞するのが水石だ。香川県高松市西春日町の園藤隆雄さんが会長を務める「旭水会」は、水石の愛好家グループである。県内に15人ほど会員がいて、水石の魅力を楽しんでいる。
大河のない香川県では名石が産出しないため、サヌカイトを素材にするなど知恵を絞った作品にも挑戦している。
作品展から
園藤さんらは毎年、香川県高松市鬼無町の花澤明春園で水石展を開いている。昨年も初夏に開催、十数席が出品された。話題になった作品を紹介する。
園藤会長の作品は、人間の顔のような姿石を配し、添景小点のカエルを見ている涼しげな風景を表現。小さいカエルが石の大きさを際立たせている。床の軸も作品の一環で、おぼろ月がこれまた夏の景色を醸し出している。
小豆島町の樋出千鶴子さんは、赤、青、黒など五つの小さい石を使った棚飾りを出品した。山型は佐渡の青石、島型は四万十川の石、そして中国の鶏血石など組み合わせも絶妙だ。
高松市塩上町の真鍋久夫さんの作品は、段石に添景小点の灯台をあしらって断崖[だんがい]絶壁の海の姿を描いている。青い水盤と白い砂の構図から夏のさわやかさが伝わってくるようだ。
(ライター・羽野茂雄)