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盆栽主義

鉢の中の小宇宙・盆栽の魅力に迫る地元四国新聞の連載記事

石付きの魅力 深山の自然美を庭に表現

2010年5月30日

 盆栽のジャンルの一つに石付きがある。深い山や海岸の岩壁で、強風に耐えながら生えている樹木を目にすることがある。その風景を表現するのが石付きの極致。香川県三豊市高瀬町の森常良さん(73)は、石付きコレクターとして知られている。

寄せ植えも自在

 森さんが石付きに魅せられたのは30年ほど前。まだ石付きが珍しい時代で、石と樹木で自然を表現する技術に、たちまち取りつかれた。さっそく各地で石を探し求め、木は自ら挿し木で増やした。石にはドリルで穴をあけ、くぼみを作ってはいろいろな木を植えた。

石付きがずらりと並ぶ棚場
石付きがずらりと並ぶ棚場=三豊市高瀬町

 森さんが経営する仕出し店の駐車場には、大小100以上の石付きが並んでいる。シンパクやサワラが多いのは、石に付きやすく根が太りにくいため、石を割らないからだそうだ。シンパクでも「黄金柏」と呼ばれる品種が気に入っているという。日光が当たると葉が金色に輝き、美しい。シンパクと黄金柏、ネコヤナギとシバ桜、ボケと黄金柏など組み合わせも自由で、山野草の寄せ植えも楽しい。

高さ78センチの水岩石に植えたシンパク(上)と黄金柏
高さ78センチの水岩石に植えたシンパク(上)と黄金柏

雑木の大半が可能

 石は水をよく吸い、石灰石の養分も含む水岩石が好ましいという。軽石は軽くて扱いやすいが、水がこもりすぎて根腐れする場合があるそうだ。

 管理のコツは懐(植える部分)を大きくしておくこと。そうすれば、木が付きやすい。懐には赤玉や花こう土を混ぜて入れるとよい。雑木なら大半が可能だが松は付きにくい。盆栽同様水やりが欠かせないが、貯めた水の中に置いておくと、石が水を吸い上げるため、水やりの手間は少し省けるという。

盆栽の世話をする森さん
盆栽の世話をする森さん

 森さんは「あちこちのいい風景を見て、その風情を石と木で再現する。最近はいい石が入手困難になってきたが、変化のある植え方をして、中国の断崖絶壁のような雄大な自然を表現したい」と話している。

(ライター・羽野茂雄)

キーワード:石付き