手作りのだいご味 オリジナルの鉢で楽しむ
香川県高松市国分寺町、松友園の川北春雄さん(68)は盆栽用の鉢を自分で焼いている。市販品では少ない豆盆栽用のミニ鉢や底に工夫を凝らした鉢などを作っている。手作りの鉢で育てる小品盆栽。園には味わい深い盆栽が並んでいる。
週に一度は陶芸
川北さんはもともと絵が好きで、一輪挿しや皿などの陶芸を楽しんでいた。12年ほど前、盆栽雑誌で鉢の焼き方や作家の話などを読み、盆栽用の鉢作りに興味を持った。
幸い、親戚に陶芸愛好家がいて手ほどきを受けることができた。窯も土もあり、環境は整っていた。このところ、毎週土曜日の午後は陶芸に充てている。
オリジナルの鉢は小さいものが中心だ。薄い、厚い、高い、低い、正方形、長方形、円、楕円など自由自在。直径、高さとも3センチほどの豆盆栽用のミニ鉢は愛らしい。山野草用の平たい鉢も。最近は、盆栽の形から理想の鉢をイメージして焼くこともあるという。
底に針金用の溝
「陶芸は窯から出すまで出来がわからない。釉薬(ゆうやく)をかけて焼くと予想できない素晴らしい色が出てくることも。温度、窯の中の置き場所でも、微妙に違うものができる。経験から判断する以外ありませんが…」と手作りの魅力を話す。
川北さんは自分で焼く鉢に盆栽作家らしい工夫を凝らしている。盆栽鉢の底には高台と呼ばれる脚部があるものが多い。盆栽を固定する針金はこのすき間に収納する。ところが、底が平たい鉢には高台がなく、水はけが悪く根腐れする場合もある。そこで考えたのが針金を通す溝。鉢の底には鮮やかな溝が入り、針金が収納されている。
「自分で焼いた鉢で育てる盆栽は何倍も楽しい」。盆(鉢)も栽(木)も楽しむ川北さんだ。
(ライター・羽野茂雄)