樹形(2)模様木と文人木 異なる風情で人気二分
前回紹介した直幹と斜幹はその形に文字通りの違いがあるが、模様木と文人木も、全く違った風情の樹形が盆栽愛好家の人気を分けている。
調和する美しさ
幹が立ち上がりから前後左右に曲がりながら伸びる模様木。その美しさから人気が安定し、各種盆栽展で上位に入賞する鉢はこの樹形が多いようだ。
幹が大きな模様を描いても、木の頭頂部と根元の基点が一直線に結ばれるよう仕立てるのがよいとされている。自在な変化の中にも、調和する美しさが模様木のポイントだ。能や歌舞伎の舞台、ふすま絵などでよくお目にかかる。
香川県高松市国分寺町、一翠園の川染和吉さん(66)は、模様木づくりにいそしむ。「この模様木は実生の黒松で、樹齢は50年ほどだろう。曲がりがしなやかで、幹模様にも風格がある。特に一の枝がよく効いており存在感が大きい。成長とともに風趣を増してきた」と持ち味をたたえている。
光る軽妙さ
文人木は、その名の通り江戸時代から文人墨客に愛されてきた。広い意味では模様木の一つにもなるが、軽妙でひょうひょうとした味わいは多くの盆栽ファンを引きつけている。特に赤松の文人木に趣がある。
全般に幹が細く丈が高いのが特徴で、それでいて幹肌に時代が乗っているものが好まれている。空間と古さが感じられるものが理想だ。枝が極限まで減らされ、幹の下方には枝がないものが多い。
香川県高松市国分寺町、池崎秀信園の池崎秀信さん(66)は「文人木は、若く勢いのあったころは枝も多かった木が、年月とともに朽ちた最終の姿だと思う。この赤松は、細い幹と少ない枝が文人のよさを備えている。幹の舎利から想像すると、自然のがけで岩が幹に当たるように生えていたのでは…」と話している。
(ライター・羽野茂雄)