赤松(2)人気回復の兆し 素材を技術で魅力的に
明治、大正のころは赤松の盆栽がもてはやされていた。それが、時代とともに五葉松に、やがて黒松に主役の座が変わった。ところが、四半世紀ほど前から、女性的で優しい赤松の人気が静かに回復している。
たおやかな風情
香川県高松市国分寺町の県農協国分寺支店盆栽部会長で清寿園の平松清さん(59)は、数々の賞を受けた赤松の名品を育てている。
その昔、料亭の部屋を飾る盆栽は優美な赤松がほとんどだったようだ。ところが、盆栽の鑑賞法が変化し、台に載せて飾るようになると、五葉松、黒松、そして国分寺が発祥の錦松などに人気が出た。
しかし、黒松などが全国的に行き渡るとともに、赤松独特のひょうひょうとした味わいや風情が見直されるようになった。その傾向が顕著なのは京都。大観展でも徐々に赤松の出展が増えている。
平松さんは「山にある純粋な赤松は幹も葉も細く、幹が赤い。樹形は文人木や斜幹系に真骨頂がある」と話している。赤松は最大の特徴である幹肌が赤いほど重宝がられるが、そうなるには相当の年数がかかるという。
やがて希少価値に
赤松は日本全国の内陸部に多い。強い風の吹く岩場など厳しい環境に育つため風雨にさらされ、芸術的なシャリやジンができやすい。折れても曲がっても、ひたすら生きようとする生命力の成せる業だろう。
しかし、赤松に限らず山採りの松は残る素材が限界に近づいている。純粋にいい木も、変わり種も激減してきた。これからは実生や接ぎ木に頼らざるを得ないが、素材が少なくなると、希少価値が出てくるとみられている。
平松さんの持論は「盆栽は人と自然の調和」。素材の持つ素晴らしさを、人の技術でさらに魅力的にするのが栽培者の務めで、できるだけ自然の姿に近く育てるのが盆栽のだいご味だと言う。そのため、山に入ると妙味あふれる自然の赤松をじっくり見て、樹形づくりの参考にすることも忘れない。
(ライター・羽野茂雄)