赤松(1)魅力と特徴 赤い肌と細い葉に妙味
黒褐色の樹皮で姿形が力強い黒松はオマツ(男松・雄松)と呼ばれ、樹皮が赤みを帯び葉性が柔らかい赤松はメマツ(女松・雌松)と呼ばれている。軽妙でひょうひょうとした赤松は、粋人に愛されながら、松盆栽の一分野を築いている。
女性的な優美さ
香川県高松市鬼無町の神高松寿園3代目の神高藤義さん(72)は、山採りや島木の赤松を育てている。樹齢約150年の名木もある。
神高さんは、小学生のころから家業の盆栽を手伝い、この道60年以上、盆栽の盛衰を見つめてきた。「戦後長いこと黒松がもてはやされ、赤松は盆栽農家に見向きもされなかった。畑でもメン(女松)を見つけると、抜いて捨てていた時代もある。山採りや島木の場合は、形がよくてもメンなら掘らずに帰っていた」と振り返る。
ところが、山や島にめぼしい黒松が少なくなってきた1965(昭和40)年ごろから、栽培者や愛好家が赤松に注目するようになってきた。凛(りん)とした黒松に対し、赤松は赤い樹皮や細い葉が優美だ。特に文人木に仕立てると、ほかの松では出せない風情がある。
整枝は判断が重要
山や島の赤松は掘り尽くされ、いいものはめっきり少なくなってきた。松寿園にあるものは年季を重ね、風趣を増している。
神高さんは、「山採りの赤松は味わい深いが、整枝が難しく、作り手の判断で良くも悪くもなる。自然の風雪でできたシャリやジン、曲など、とても人の技の及ばない部分も多い。しかし、その分、他人が失敗したものをやり直す改作の面白みもある」と話している。
神高さんは実生の赤松も育てている。山採りの風情を出すのは至難の業らしいが、自然の姿に近づけるため、シャリを作るなどさまざまな工夫を凝らしている。
神高松寿園には名品を陳列した「瑞宝殿」がある。写真の赤松は鉢上げから日が浅いため、ここに入るのはまだ先。しかし、「将来性のあるものも育っている」と、”殿堂入り”に夢をはせている。
(ライター・羽野茂雄)