五葉松(2)世紀を超えて 座敷から盆景を楽しむ
何代も続く老舗盆栽園ともなれば、100年を超える名品も珍しくない。宝のような松が文字通り林立している畑もある。
創業100年の貫録
高松市鬼無町の北谷植古園の北谷勝弘さん(62)は同園の4代目。創業100年を超え、すでに後継者の5代目一樹さん(36)も盆栽のインターネット販売などで活躍している。
北谷さんの畑には、樹齢100年を超える「銀八ツ房」の五葉松が並んでいる。先々代が接ぎ木したもので、樹高は1メートル以上の古木である。鬼無の畑でも最も古い部類と見られている。北谷さんは「記憶では、私が本格的に盆栽を始めた30年も40年も前から樹齢100年と言われてきた。実際は150年くらいになるのでは」と笑う。
そして「盆栽ブーム全盛の1970年代に、畑の松を丸ごと買い取りたいとの話もあったが、愛着があって手放せなかった。ここまで大きくなると、植え替えが大変で盆栽にするには骨が折れる。時に輸出しているが、日本では家や庭の大きさから盆栽として扱うのは難しい。盆景というか、座敷から庭を盆栽の風景のように楽しむ方に育ててもらえたら」と話している。
松かさが薬に?
平成の初めごろ、五葉松の直径1センチほどの小さい松かさが出荷されていた。健康食品ブームで、業者が引き取っていった。北谷さんも出荷した経験があり、「胃腸薬の原料になるとか。子どもや年寄りがこぞって採取し、そこそこの日当になっていた。今では懐かしい思い出だ」と言う。
昨年夏の猛暑は鬼無でも厳しいものだった。畑の松は鉢上げした松ほど水は必要としないが、昨年夏のような少雨と猛暑が重なると話は別だ。太陽が当たる南側の面が茶色く焼け、古葉の始末に時間を取られた。
北谷さんは「山の雑木も焼けるほどで、あれほどの暑さは覚えがない。畑の松も一時は勢いを失いかけ、商品価値に影響が出るのではと心配した」と半年前を振り返った。
(ライター・羽野茂雄)