松柏と雑木 鉢の中に広がる小宇宙
高松市の鬼無町や国分寺町一帯は、全国シェア約80%を占める日本一の松盆栽の生産地である。名勝五色台のふもとには、盆栽畑が広がり、庭に多くの鉢を並べた盆栽農家が点在している。今回から、香川県の特産である盆栽に親しんでもらうため、松盆栽を中心にした盆栽の現状や課題を紹介する。
盆栽は、松柏(しょうはく)と雑木に大別される。松柏とは、言わずと知れた松と真柏である。松は盆栽の王様とも言われ、黒松、赤松、五葉松がある。黒松の変種に、国分寺が発祥の地とされる錦[にしき]松がある。樹皮が厚く、亀の甲羅のように裂ける品種である。
黒松は豪快で男性的、赤松は繊細で女性的なイメージがある。五葉松は、他の松に比べて葉が短いため、もともと盆栽に適している。
真柏も松と同様、自然に育てば巨木となる。土庄町の宝生院にある真柏は、樹高が20メートルもあり日本最大の真柏とも言われ、国の天然記念物に指定されている。この木の真骨頂は「舎利幹(しゃりかん)」と呼ばれる白骨化した幹の凄[すさ]まじい造形美だろう。まさに自然が作った芸術である。
どちらかといえば彩りに乏しい松柏と違って、季節感や花や実を自在に楽しめるのが雑木である。季節によって姿が変わるのも大きな魅力だ。室内でも楽しめる手軽さが受けて、若い人たちにも人気が広がっている。種類は数限りなく、9月15日と16日に開かれた国分寺盆栽作風展にはモミジ、ケヤキ、カエデなどの定番をはじめ、新しいところではレモン、クワ、イチジクなど40種類以上もの雑木盆栽が出品されていた。
雑木盆栽は、サルスベリやフジなどの花もの盆栽、ピラカンサやカリンなどの実もの盆栽、山野草などの草もの盆栽に細分化される場合もあるが、県農協国分寺支店盆栽部会の平松清会長は「野山にある木々は適性を生かせば基本的にすべて盆栽になる」と話している。
とにかく、鉢に植えるところから盆栽が始まる。若い人たちの感性が鉢に反映されると、そのジャンルはどこまで拡大されるか魅力は尽きない。
(ライター・羽野茂雄)