花澤登人さん(花澤明春園)
花澤明春園の3代目園主・花澤登人さんは、昭和31年9月30日、「高松市鬼無町」の誕生と同じ日に生まれた。当時は盆栽ブームの最盛期、後を継ぐのが当然と思って育った。
香川農業大学校から短大に進み、卒業後も修行を重ねて自信をつけたが、30代で「大観展」などを経験して全国のレベルを思い知る。「まるで井の中の蛙だった。職人としても産地としても一流を目指さなくてはと強く思った」と花澤さん。
それからは各地の園を訪ね歩き、技術の研究だけではなく商売の仕方なども勉強した。40代になってようやく答が見えたという。園は盆栽を見て、触れて、手に入れるための場所。一流を目指すなら、訪れた人がいつでも楽しめる演出とサービスは不可欠だ。自園でも棚場の飾り方を工夫したり応接室をつくるなど、「店舗」としての充実を図っている。 もちろん、良質な素材の産地として長い歴史を持つ鬼無・国分寺には、一流のメーカーに育つ素地がある。花澤さんは「十分な生産が見込めるだけの畑があり、腕のいい職人もそろっている。何を目指すか、どんなものをつくるか、これからの十年で勝負をかけたい」と意気込む。
多くの人が魅力的だと思うものをつくるため、マーケティングの重要性も意識している。人気の高さを見越して、七年ほど前から山野草にも力を入れ始めた。端正につくり込む松柏盆栽とは一味違う、自然そのままの姿を生かした美しさが魅力だ。「盆栽は鉢の中に自然を再現し、室内に季節を飾る”遊び”。気軽に楽しむ人を増やせば、盆栽文化の発展にもつながる」と語っている。