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盆栽入門

基礎知識や普段の手入れ、鑑賞のツボ…盆栽の「いろは」をプロが解説します。

黒松の整姿 冬は芽摘みや剪定の適期

2010年12月13日

 推定樹齢80年、樹高42センチの黒松。香川県高松市鬼無町の中西珍松園で培養している根張りも見事な模様木だが、前回の植え替えから3年、葉が茂り、全体にもっさりして整姿の時期を迎えた。5代目の中西陽一さん(43)は、ハサミを使ってこの樹を絞り込んだ。

ハサミでさっぱり

 今年7月上旬に芽切りして整えた樹形は、夏の成長期を経て、葉が伸び、芽が込んできた。樹が休眠期に入る11月以降は、芽摘みや剪定(せんてい)など整姿の適期だ。

 全体の形が荒れていないため、ジャッキや太い針金を使う大幅な改作は必要なしと踏んだ中西さん。ハサミを使って芽の整理と葉すかしを行い、樹形を絞り込むように整えた。

ハサミで丁寧に芽を切る
ハサミで丁寧に芽を切る=香川県高松市鬼無町、中西珍松園

 夏に整理した芽は、再び1カ所から三つ、四つとできている。まず、これを2芽程度に整理する。それでも重なる部分があれば1芽に仕上げる。たちまち樹形はすっきりした姿になり、隠れていた幹や枝ぶりも見え始める。葉は古葉を取り除き、全体的に短く刈り込むとよい。こうすると、日が当たり、風も入るようになる。ハサミによる穏やかな整姿が完成した。

鑑賞に堪える

 作業前と比較すると、すっきりした樹形が際立つ。中西さんは「この作業が終わると、やっと盆栽として鑑賞に堪えられるようになる。樹の成長が落ち着く冬場は、無数の鉢と格闘です」と話している。

整姿前(左)と整姿後の黒松
整姿前(左)と整姿後の黒松

 このくらいの樹だと整姿は1日で終わる。ただ、樹が成長を続けるため、毎年の葉すかしや芽摘みに加えて、3~4年に一度は整枝や改作が必要となる。盆栽作家たちは、こうした丹精を重ねて、樹格の向上に努めている。

 展示会の前にも、整姿作業を行う。樹を締め込み、コケを張ったり、鉢を変えたり。名品の陰には、作家たちのさまざまなアイデアが隠れている。

(ライター・羽野茂雄)

キーワード:中西珍松園 整姿 鬼無 黒松