接ぎ木(下)整姿や水やりに手間暇
前回は接ぎ木の魅力や方法を紹介した。今回は接いだ後の管理の仕方や出荷するまでの育て方を香川県高松市国分寺町、綾松園の綾田正さんに聞いた。一本一本の苗木に愛情を注ぎ、たっぷり手間暇をかけていることがわかる。
水を欠かさない
接いだ直後の穂木は人間で言えば生まれたばかりの赤ちゃん。形成層ができて台木に活着するまでは細心の注意が必要だ。
まず、穂木を乾燥させないよう葉に水分を与えることである。非常にデリケートな状態にあるため、水分を含ませたビニール袋をかぶせる方法もある。
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2月に接いだ穂木は、その年の5月ころに「ローソク」と呼ばれる芽が伸びてくる。綾田さんは「ローソクがしっかり伸びてくると、うまく活着した証拠です。勢いよく伸びる姿を見ると、寒い時期の接ぎ木の苦労も報われます」とその季節の到来を待ちわびている。
翌年秋に出荷
今年接いだ苗木は通常来年秋に出荷する。それまで綾松園ではさまざまな世話を繰り返す。先述の丁寧な水やりで活着が成功すると培養に入る。
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その年の秋から翌年春にかけて徒長した枝を落として姿を整える。綾田さんが接ぎ木をする傍らで後継者の正人さんが、整姿の作業に励んでいる。この時期にいったん姿を整えておき、秋まで水やりを繰り返すなど手塩にかけて出荷の直前に再び整姿する。
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綾田さんは「うちの仕事はそこまで。苗木を育てることに徹しています。その後は、技術の優れたプロが名木に育て上げてくれることを願っています」と話している。畑には、昨年接ぎ木したものと、今年接ぎ木している苗木が並ぶ。1年たてばこれほどしっかりしてくるものかと驚くほどの成長ぶりだ。
(ライター・羽野茂雄)