技術編(2)接ぎ木 親木の性質そのままに
盆栽の繁殖には、種子から育てる実生と、接ぎ木、挿し木などがある。県内で行われている接ぎ木の主な手法を香川県高松市国分寺町、綾松園の綾田正さんに聞いた。
低接ぎ・高接ぎ
接ぎ木は実生でできないものや、挿し木では難しいものを作りたい時などに用いる。利点は、親木の性質をそのまま受け継ぐ木ができること。通常、黒松実生苗の2年生を台木にあらゆる樹種の松を接いでいる。
根の生え際に斜めに切り目を入れて接ぐのが低接ぎ、木の先端を割いて穂を差し込むようにするのが高接ぎ。できるだけ接ぎ目をわからなくするのが高度な技術だ。
接ぎ穂は木の頭部や枝の先など日当たりのよいところの元気な新芽を選び、台木と穂木の形成層をうまく合わせて接ぐのがミソ。この方法なら、どんな松でも自在に作ることができる。
幹接ぎ
綾田さんの得意技に幹接ぎがある。古木の枝のない部分や枯れてしまったところに、ノミと金づちで穂を接いで新しい枝を作る改作である。人間の体で言えば移植のような大手術だ。
手順は、まず荒皮を削る。そこにノミで穴を開け、瞬間的に穂を埋め込む。植えた後は水ごけとテープを巻き、さらに水を含ませたビニール袋をかけて保護する。半月ほど屋内で養生して棚場に出し、徐々に日光を当てるようにする。
幹接ぎは、全体では取るに足りない木でも、ある部分が素晴らしくて、そこを生かしたい場合などに行う。新しく接いだ枝が成長した後は、元の木の大半を切り捨てることもあり、まるで違う姿かたちに生まれ変わる。
どこに枝を作り、どんな木にするのか。作り手の技術とセンスが要求されるところだ。
(ライター・羽野茂雄)