春の手入れ(上)葉すかし 光合成し病害虫も予防
盆栽には季節ごとの世話や手入れがある。春は、冬場に休眠していた木々の動きが活発になり、芽や葉も勢いよく伸び始める。この時期の作業で重要なものが葉すかし。高松市国分寺町にある春松園4代目の平松浩二さん(41)に、葉すかしのコツを聞いた。
陽光をたっぷり
葉すかしは、おおむね11月後半から4月前半くらいまで行う。込み合った葉をすいて、日当たりや風通しをよくすることで光合成が活発になり、病害虫の予防にもなる。茂った葉で隠れていた内側の芽にもたっぷり太陽の光を当てる重要な作業だ。
枯れた古葉はもちろんすべて取り除き、今年になって出てきた新しい葉も半分くらいに整理する。半分から3分の1ほどを目安に落としていく。平松さんは両手の指を使うリズミカルな早業で、どんどん葉っぱを落としていく。
盆栽のプロたちは葉すかしと平行して針金かけの作業も行い、効果的に枝の形を整えていく。いわゆる整枝である。
古木もていねいに
樹高1メートルにも及ぶ黒松を平松さんが5年ほど前に改作した盆栽が、春松園にある。専門誌にも変ぼうぶりが大きく取り上げられた有名な木だ。
改作前は、それこそ庭木にするくらいしか将来が見えない巨大な黒松だった。しかし、平松さんはこの木の持つ捨てがたい個性を見抜いて、思い切って上部の太く長い枝を切り落とし、ジャッキを使って樹高、幅とも58センチに改作した。時代を感じさせる舎利幹やジンもバランスよく配置され、見事な盆栽に仕上がっている。
平松さんによると、樹齢は50年ほどという。古木になっても、葉すかしは必須の作業だ。毎年春先には、いとおしむように一本一本葉をすかしている。
(ライター・羽野茂雄)