種類(上)松のいろいろ-高松は全国シェア8割
2007年10月から始まった盆栽企画には、「盆栽の基礎知識や基本的な育て方などを紹介して」との要望が寄せられている。そこで今回から、おさらいの意味も込めて盆栽を気軽に楽しむための入門編を連載する。
海の黒松、陸の赤松
盆栽には、大きく分けて松柏と雑木がある。松柏とは文字通り松と真柏。松盆栽は、高松市鬼無町と国分寺町が全国シェアの80%を占める日本一の生産地とされている。松は、その風格から盆栽の王様とも言われる。黒松、赤松、五葉松が中心で、黒松の一変種である錦松もある。
黒松は黒褐色の太い幹を持ち、豪快な中にも近寄りがたい気品がある。年代物になると、幹肌の割れ方も見事な名品が多い。日本全国の海岸部や神社、景勝地などに広く分布し、風景に溶け込んでいる。各地の松原でも黒松の美林を見ることができる。
赤松は内陸部に多く、樹皮が赤みを帯び、葉性[はしょう]も黒松に比べると柔らかい。その風情から女松[めまつ]とも呼ばれ、明治時代までは黒松より主流で、文人墨客たちに愛されてきた。特に赤松の文人木にはえもいわれぬ魅力がある。
錦松は国分寺が発祥
五葉松は独特の5本の葉が優美で、さまざまな樹形に育てやすく、いったん作った樹形は崩れにくい。そのため、最初に針金をかければ、小枝の整枝と剪定[せんてい]程度で樹形を維持でき、培養が容易だ。香川県内では「銀八ツ房」が圧倒的に多い。
錦松は香川県国分寺町が発祥地で、明治中期に末沢喜市翁が接ぎ木に成功、大量生産を可能にした。豪快な樹皮の割れ方、古木感が特徴だ。昭和40年代に全盛期を迎えたが、生産過剰などから激減。現在は樹高15センチほどの夢錦を売り出している。喜市翁は国分寺盆栽の功労者と仰がれ、盆栽神社に顕彰碑が建っている。
(ライター・羽野茂雄)