将来を担う(1)器の工夫で人気高める
アジア太平洋盆栽水石高松大会の成功で盆栽人気回復に弾みがついたのは事実だが、将来の業界のあり方も問われ始めている。日本一の松盆栽の産地である香川県高松市鬼無町や国分寺町では、経験豊かな作家たちが新しい考え方を取り入れ、人気回復を目指している。
楽しく気軽に
香川県高松市鬼無町、花澤明春園の花澤登人さん(55)は、季節の草木を自在な器に植えて楽しむ山野草の盆栽に力を入れている。花澤さんは、重厚な松柏盆栽は伝統を重視する必要があるが、山野草は自由な発想で好みや個性を出してもいいと強調する。
「盆栽も昭和40年代の全盛時代と同じことをしていては飽きられる。今までのやり方が時代遅れになってきたことを痛感している。若い人の盆栽離れを防ぐためには、樹種を広げ、器選びや植え方を工夫するなど、楽しく気軽に取り組むことが望ましい」と話す。
盆栽の世界では、樹は主役で鉢はわき役。植物の育て方や土の配合など基本は守りながら、「器は思い切り自由な発想で」というのが花澤さんの持論だ。
インテリアにも
事実、花澤さんの作品は斬新で夢がある。近作の三河瓦の器に植えたツバキや梅、平たい鉢に植えたマダケの一種の「金明竹(きんめいちく)」などは、インテリアとしても将来性が感じられる。三河瓦の器は樹とのバランスを考えて使ってみたそうだ。
花澤明春園のパンフレットには「季節を遊ぶ」のタイトルが付いている。「山の木、野の草、傍らの花」のコピー通りにツクシやフクジュソウなど野にある姿そのままに再現した作品も紹介している。
花澤さんは、自然の石や流木も器にする。割れたつぼやほうろくなども自在に使っている。小さな器の宇宙で楽しむ季節感。山野草は盆栽界での比重と人気を着実に高めている。
(ライター・羽野茂雄)