頑張る若手 恵まれた環境で成長に期待
盆栽業界の大きな悩みは後継者不足だが、香川県高松市鬼無町では若手の活躍が光る。親元で修業中の北谷養盛園の北谷隆一さん(30)と花澤明春園の花澤美智子さん(29)は、斬新な感性が評価されている。
古木の素材を守る
北谷さんは、自園の畑で来年春に鉢上げする松の根回しに追われている。スコップで松の周囲を掘り、伸びた根を切る作業だ。いったん形を整えると再び土をかぶせて養生する。こうしておくと、来春の鉢上げが簡単になるという。
北谷養盛園の畑には、先代、先々代から受け継いだ古い樹が多い。4代目の隆一さんは、「山採りの古い松は希少価値がある。素材の質をさらに高めて提供するため、日々の作業で手を抜かず、本物の樹を作っていきたい」と話している。
鬼無地区では、父の和彦さんをはじめ周辺で教えてくれる師匠に事欠かない。恵まれた環境の中で、盆栽どころの将来を担う若者が育っている。
若い感性を生かす
花澤さんは、父登人さんのもとで苔(こけ)玉作りに励んでいる。7年の経験を積み、作品は季節の草樹を使うものが中心だ。
独自に考案した瓦と苔玉のコラボレーション、数字を表現する苔玉などは既に人気が定着している。最近はバレンタインにちなんで黒松をハートの形にした苔玉も作っている。
苔玉の魅力について「手軽に作れて、丸だけでなく四角や長細いものなど自由な形ができます。水やりなど世話を続けると来年も花を楽しめます。鉢植えと違って植え替えの必要もないし…」と話す。ツバキ、サクラ、フクジュソウなど、近作の花ものはインテリアとしてもおしゃれだ。
女性独特の感性を生かし苔玉にかける美智子さん。将来はみんなで楽しむ教室の開催も考えている。
(ライター・羽野茂雄)