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盆栽主義

鉢の中の小宇宙・盆栽の魅力に迫る地元四国新聞の連載記事

受賞重ねる収集家 県を代表する展示会の「顔」

2011年9月5日

 昨年の第23回グリーンフェスタ国分寺で最高賞の文部科学大臣賞を受けた黒松は、香川県観音寺市大野原町の矢野勇さん(81)が所蔵している。同フェスタでは、文部科学大臣賞7回、環境大臣賞4回、県知事賞6回という香川県を代表する収集家で、管理の腕はプロ級とも言われている。

黒松の世話をする矢野さん
黒松の世話をする矢野さん

150坪の棚場

 矢野さんは40年以上の収集歴を持つ。専門誌などで勉強してきたが、1997年に清寿園=香川県高松市国分寺町=の平松清さん(62)と出会い、本格的に盆栽の世界に足を踏み入れるようになった。

 平松さんの剪定(せんてい)や針金掛けなどプロの技にほれ込んだ矢野さんは、教えを請いながら、コレクションを増やしてきた。「腕は全国級の平松さんが手とり足とり教えてくれた。彼と出会わなければ今の自分はない」と感謝している。

 自宅にある約150坪の棚場には、松柏を中心に雑木など約1000鉢が並んでいる。お気に入りは盆栽の王様黒松だ。霊峰雲辺寺山が見える棚場は、「花松園」と名付けてしゃれこんでいる。菊栽培で知られた矢野さんらしい命名だ。

雲辺寺山(左奥)が見える棚場
雲辺寺山(左奥)が見える棚場=香川県観音寺市大野原町

管理の秘けつ

 矢野さんの管理の技術は「本職でも難しいような見事な葉を出しますよ」と平松さんも認めている。

 本人に秘けつを聞くと「肥やしや水をやり過ぎないようにしているくらいです。何事も多過ぎはよくないですよ」と笑う。土づくりには心を砕き、植え替えも時期を失しないように気をつけている。「私の鉢は水がよく抜けると皆さんが言ってくれます」。長年の菊や野菜づくりの経験からくる知恵だろう。

昨年の文部科学大臣賞に輝いた黒松
昨年の文部科学大臣賞に輝いた黒松

 今年のグリーンフェスタのポスターと来年のカレンダーの表紙は、矢野さんの受賞作品が飾る。「好きなものに囲まれて生きるのが元気のもとです」と語る矢野さん。充実の日々が続く。

(ライター・羽野茂雄)