黒松「瑞宝」 挿し木の技術開発に期待
香川県高松市国分寺町の瑞松園の片岡昌明さん(75)は、黒松の突然変異から生まれた「瑞宝」を培養している。荒皮性が最大の特徴で、皮が早くでき、葉性が太くて硬く、芽吹きがよいなどの利点を備えている。
親木は五色台から
片岡さんは1955年ごろ、自宅に近い国分台で、皮が割れて葉性のよい樹高60センチほどの黒松を見つけた。国分台は五色台の南端にある台地。付近では46年に火災があり、それ以降に芽生えた樹ではと推定されている。さっそく穂木を取って培養し、自園の一字を入れて「瑞宝」と名付けた。
以来、接ぎ木や取り木で増殖を試みた。接ぎ木は、黒松の挿し木の2年物に接ぐとうまくいくことがわかった。昨年接いで今春植え替えたポット苗が園内に並んでいる。今秋にも台木を飛ばし、4~5年培養すると出荷できるようになる。接ぎ木は根張りもいいものができるという。
取り木は、接ぎ木ほど大量にはできないが、太い部分を取って3年もすると風格が備わってくる。
挿し木の技術開発はまだ芳しい結果が出ていない。資源保護のためにも、研究成果が待たれている。
20年でも古木感
盆栽で重要視される時代感が早くつくのも「瑞宝」の大きな特徴だ。同町の清寿園、平松清さん(62)は片岡さんの園から出た樹高18センチの「瑞宝」の小品を管理している。挿し木で育てた推定樹齢20年くらいの樹である。
この樹は、太く硬い葉状や荒皮など、「瑞宝」の良さを備えている。その上、幹構えがよく、根張りも堂々としている。根元にはコケがつき、さらに時代感を醸している。
平松さんは「いい盆栽の要素を備えている。小品盆栽の模様木では理想の形でしょう。時代が乗ってくると、さらによくなりますよ」と絶賛している。
(ライター・羽野茂雄)