黒松の新品種・旭龍 葉は太く幹の育ち早い
香川県高松市鬼無町の尾路旭松園の尾路悟さん(52)は黒松の突然変異から生まれた島木の「旭龍」を接ぎ木で増やし、商品化している。培養を始めて約10年、生産も安定してきた現在、挿し木で増殖する可能性を探って研究を続けている。
荒皮性で太い葉
「旭龍」の親木は1973年、瀬戸内海に浮かぶ兵庫県の西島から掘り出された。その後は尾路さんの畑で培養し、4年前に鉢上げした。樹高110センチ、見事な葉性と荒皮で樹勢は良好だ。根元から約15センチのところで突然変異したものではと尾路さんはみている。
「旭龍」の特徴は、八つ房荒皮で、葉は太くて緑色が濃い。芽吹きがよく、幹の太りも早い。一般的に黒松は皮が乗ってくるまで10年はかかるが、「旭龍」は5年たてばかなりの風格が備わってくる。
尾路さんは、ポット苗を3年ほどで植え替え、さらに培養して5~6年生を出荷する。2~3年生の若苗は枯れる心配もあるからだ。
挿し木で培養を
これまでもっぱら接ぎ木で「旭龍」を増やしてきた尾路さんは、挿し木による増殖を検討している。親の性質をそのまま受け継ぐのは接ぎ木と同じだが、挿し木の方が樹の特徴をよく表現できると考えるからだ。接ぎ木だと、台木より接いだ部分が太くなる、いわゆる「根細」になる場合もあるが、こうした懸念も挿し木なら払拭(ふっしょく)できるのではないかとの発想である。
尾路さんは「旭龍に限らず、松盆栽の素材確保や商品価値を高めるには、挿し木技術の開発がぜひ必要だ」と強調する。しかしながら、松の挿し木は難しい。これまで「瑞宝」「寿」「夢錦」などで研究が行われているが、まだ芳しい結果は出ていない。現在進んでいる松の挿し木技術の確立が待たれるところだ。
(ライター・羽野茂雄)