サツキ(下)花後の手入れ 翌年の姿を夢見て丁寧に
サツキの花の時期は短い。本当に美しい期間はせいぜい2週間。その短い花期のために、愛好家は1年間の丹精を続けている。花が終われば、すぐ翌年に向けた手入れが始まる。国分寺町さつき会の大西芳文会長(61)に、1年間の世話の概要を聞いた。
花落としと剪定
花後の代表的な世話が花落としと剪定(せんてい)である。素人にはまだ美しい姿でも、プロの目は厳しい。雄しべに黄色い花粉が付き始めるころを目安に、すべての花を落とす。時期を失うと花がしおれ傷んできたり、花腐れ病の心配もある。花の中に黒いゴマのようなものができる症状だ。
大西会長に、満開の「愛国」の花落としと剪定を見せてもらった。ハサミで一つ一つ花を落としながら、翌年の樹形を考え剪定もしていく。咲き分けの品種の場合は、翌年の色のバランスも想像した作業となる。およそ1時間、華やかな花の姿とは対照的なすっきりした枝模様が表れた。
途切れぬ年間の世話
サツキは年間を通していろいろな世話がある。花が終われば花落としと剪定、同時に「お礼肥(ご)い」といわれる施肥がある。8、9、10月にも肥やしを与える。油粕(かす)や骨粉をブレンドして発酵させたものである。
盆以降は「芯食(しんく)い虫」やダニの予防。年が変わると正月から針金かけ、2―3月には植え替えがある。鉢植えの場合は3―4年に1回程度だ。もちろん、水やりは年中欠かせない。こうして、愛好家たちの手は休まる暇がないようだ。
ただ、サツキの楽しみは花の時期に限らない。秋には樹形や葉の美しさを競う展示会もある。この時期のサツキを愛する人も多いとか。「花のない秋は、盆栽としての真価が問われるためかえって厳しい」と大西会長は話している。
(ライター・羽野茂雄)