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盆栽主義

鉢の中の小宇宙・盆栽の魅力に迫る地元四国新聞の連載記事

コレクター(1)展覧会で多くの入賞歴

2010年6月11日

 盆栽産地の香川県には熱心なコレクターがいる。高松市内の鬼無や国分寺で開催される盆栽展や盆栽市には、名品を探す愛好家が集まる。近年は人気の広がりを反映して、ベテランだけでなく、若いコレクターも登場している。

収集歴40年

 観音寺市大野原町、菊栽培農家の矢野勇さんが盆栽を見初めたのは40年ほど前。購読していた農業雑誌で美しい盆栽を見てからだった。以来、独学で盆栽を育ててきた。

 矢野さんは県内外の盆栽展にも足を運んだ。国分寺町のグリーンフェスタも毎年のように見学した。そこで知り合ったのが、今では盆栽の師とも仰ぐJA国分寺の前盆栽部会長、平松清さんだ。平松さんは、展示会が始まる前の飾りつけの段階から、一点一点じっくり観察する矢野さんに声をかけた。

黒松の芽かきをする矢野さん
黒松の芽かきをする矢野さん=観音寺市大野原町

世界が変わる衝撃

 矢野さんは、自宅に約150坪の広い棚場を持ち、松柏、雑木を含めて千鉢ほどの盆栽を育てている。特に黒松が好きで、変わり木を大切にしている。

 平松さんの木を見て「針金かけがスキッとしていて落ち度がない。自分が育てた木と比べると、世界が変わるほどの衝撃だった」と話す矢野さん。

名品が並ぶ矢野さん宅の広い棚場
名品が並ぶ矢野さん宅の広い棚場

 平松さんに教わりながら本格的に取り組み、1998(平成10)年から、グリーンフェスタ国分寺に出展するようになった。以来、最高賞の文部大臣賞6回をはじめ、環境大臣賞4回、知事賞4回に輝いている。

 「盆栽を通じて、いろんな人と知り合えたのが私の財産です」と語る矢野さん。夏場は毎日2回、春秋は1日1回、冬場も2、3日に1回という水やりが日課になっている。「水やりは大変だろうと言われるけど、水を与えると幹が黒くなって水滴が光る。あれが何とも言えないですね」と意に介していない。 

(ライター・羽野茂雄)

キーワード:コレクター