最近のヨーロッパ事情 伝統や考え方まで吸収
「BONSAI」という言葉が通じるほど、世界でも盆栽人気が高まっている。アジアはもちろん、北米、ヨーロッパでは特に愛好家が多い。ここ10年ほど、毎年のようにヨーロッパを訪れている高松市国分寺町、山松園の山地宏美さんに、最近の盆栽事情を聞いた。
目を見張る技術の向上
山地さんは、訪欧のたびに感じることがある。それは、欧州の盆栽技術の向上ぶりだ。20年ほど前は、日本から輸出した品物をそのまま展示販売する程度で、専門誌も日本のまねごとに過ぎなかったという。
ところが今年9月、ワークショップの講師としてフランスに招かれた際、現地の盆栽展で見た作品には目を見張った。ピレネー山脈で山採りした一位(いちい)、シンパクなどは、日本のものと微妙な違いはあるが、盆栽としての将来性は素晴らしい。水石も展示され、「わび」「さび」の境地に達するものまであるそうだ。
考え方も日本的
盆栽人気が世界に拡大したのは、1970年の大阪万博がきっかけだったといわれる。以来40年の歳月がヨーロッパの盆栽技術を飛躍的に向上させた。
山地さんは「その昔、日本のブドウ農家の人々がフランスボルドー地方から栽培技術を習得して産地を形成したのと逆の状況が起きている」と話す。さらに「ヨーロッパの人々は、日本の伝統的な形や考え方を吸収したうえで、創作にかける努力を怠らない。柔道が世界に本家を奪われかけたように日本も努力を怠ると…」と警鐘を鳴らす。現地の専門誌に掲載される盆栽は、日本の展示会に出品してもおかしくないレベルだ。
山地さんが欧州へ輸出する五葉松も、日本と同じコンパクトな葉状のものが主流となっている。コケ順もしかり。強力なライバルの登場である。
(ライター・羽野茂雄)