寒樹の美しさ 冬枯れの季節に楽しむ
落葉樹が冬場に葉を落とし、幹と枝だけになったものを寒樹と呼ぶ。根張り、幹肌の色合い、小枝のほぐれなど、この時期にしか味わえない魅力がある。香川県高松市国分寺町、清寿園の平松清さんに寒樹の見どころを聞いた。
ごまかせない美
美しい緑模様や華やかな花や実が盆栽の大きな魅力である。しかし、冬枯れの季節の寒樹の姿にも引きつけられるものがある。
寒樹の最大の魅力は、ごまかせないことである。幹肌はもちろん小枝の先まで見渡せることから、作り手の日ごろの丹精が如実に表れるとも言われる。
平松さんは「寒樹を見ていると、なぜか厳しい自然が想像できます。時には雪景色の中に立つ姿や強風に耐える姿なども思い浮かびます」と話す。そして「愛好家には寒樹を見て購入する人がいます。葉や花はある程度想像できますが、幹模様や細かい傷の状態まで見える寒樹は盆栽のよし悪しを選ぶ何よりの参考になります」と教えてくれた。
山モミジとカエデ
寒樹の美しい樹種には山モミジ、カエデ、ケヤキ、ヒメシャラ、イワシデなどがある。今回は、山モミジとカエデを見せてもらった。
樹高50センチの山モミジ。10本ほどの寄せ植えが癒着したもので、平松さんの手にかかって10数年。それまでにも10年はたっているとみられる。平松さんは「2月いっぱいは寒樹の姿をめでながら、春の芽出しの赤、初夏の新緑、秋の紅葉と今年も楽しみです」と話している。
樹高15センチのカエデの模様木。取り木で仕立てた小品盆栽である。小さいながらも幹模様が堂々とし、根張りもいい。既に20年前後は経ているが「こまめに小枝を整理して、さらに時代を重ねて太らせると、幹肌が黄土色になり、皮がはがれて古木感が出ると思います」と期待を寄せている。
(ライター・羽野茂雄)