樹形(5)根上がりと株立ち 生きる姿、大木感が魅力
根上がり松は全国各地で観光資源にもなっているが、人工的に作る方法がある。株立ちは一本の木で雄大な自然を表現するもので、みなぎる大木感が素晴らしい。
根に合わせ枝づくり
土砂崩れや雨で土が洗い流され、根がむき出しになりながらも生き続ける姿を表すのが根上がり。細かい根が集合したもの、幹のような太い1本の根でできた2種に大別される。いずれも根の動きに合わせた枝づくりが大切なのは言うまでもない。
香川県高松市国分寺町、瑞松園の片岡昌明さんは、48センチほど根が上がった実生の黒松を育てている。通常の根上がりより、さらに辛抱して根を持ち上げた木と評判が高い。
片岡さんは「苗木を『あぜ波』と一斗缶の2段階で根上がりに育てると、根に曲と味、動きが出てくる。自然の姿に近い木ができ、25年から30年でかなりの古木感が出せるのが魅力」と話している。
盆上に広がる自然
一株の根元から3本以上の幹が立ち上がる樹形を株立ちと呼ぶ。自然の野山で見かける風景を鉢の中で表現したものである。それぞれの幹の太さや長短に変化があり、それでいて全体の調和がとれているものが望ましいとされる。
一つの根から何本もの幹が出て、株立ちを広くしたような樹形を「根連なり」と呼ぶこともある。
香川県高松市鬼無町、小西松楽園の小西幸彦さんは五葉松の株立ちを育てている。「埼玉県の盆栽店で、バランスのよさが気に入って購入した。幹肌の荒れ具合などから判断すると樹齢も60年は経(た)っているだろう。今のところ針金をかけないで、ハサミで柔らかい感じに整姿している。細い幹が5本あって大木感、古木感が出ているのがよい」と話している。
(ライター・羽野茂雄)