樹形(4)寄せ植えと石付き 「調和」で個性引き出す
1本ではこれといった個性のない木でも、数本を寄せ植えにすると輝きを増す場合がある。石付きは、見慣れた鉢との組み合わせでなく、木と石の調和が人目を引く。ともに個性が光る樹形である。
森や林の風景を表現
主木を中心に数本の樹木を一つの鉢に植えて森や林の風景を作り出すのが寄せ植え。松はもちろん、カエデ、ケヤキなど雑木類や山野草を寄せる場合もある。
薄めの鉢を使い、植物のバランスを考えながら奥行きの出る配置を心掛ける。エゾ松の寄せ植えに深山幽谷の姿が、雑木類の寄せ植えには丘陵の林が、山野草の寄せ植えには軽妙で渋い風趣が味わえる。
香川県高松市鬼無町、北谷植古園五代目の北谷一樹さんは、エゾ松の寄せ植えを培養している。「出雲で買った9本の寄せ植えを6本に作り替えた。鉢を渋い泥ものにすると完成に近づく。寒い北国の厳しい自然環境がよく表現できていると思う」と寄せ植えの魅力を語っている。
木と石が織りなす自然
樹木と石の組み合わせで大自然の景観を表すのが石付き。石の美しさ、木の力強さ、根の趣きが調和したものが名品とされる。
石付きの観賞には、水盤と鉢の2種類がある。前者は石そのものが見もので、雄大な景色を表現する。後者は石自体よりも石と根が絡み合うように置かれる。
香川県高松市鬼無町、花澤明春園の花澤登人さんは淡路島の山採り黒松の石付きを育てている。樹齢はおよそ半世紀、石付きに仕立てて十数年という。
「この子(木)は鉢植えでも十分いける個性を持っているが、岐阜県揖斐川の龍眼石に付け、針金で整姿したら、鉢植えでは表現できないいい形になった。年月とともに根土にコケが付いてくれたらほぼ完成です」と期待している。
(ライター・羽野茂雄)