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盆栽主義

鉢の中の小宇宙・盆栽の魅力に迫る地元四国新聞の連載記事

樹形(1)直幹と斜幹 持ち味生かし理想追求

2010年1月25日

 盆栽にはさまざまな樹形がある。自然の木々の姿をもとに、剪定(せんてい)や針金で樹形を整えていく。栽培者たちは、それぞれの木の持ち味を生かしながら、理想的な姿を追求している。

均整の良さ命

 どの方向から見ても幹がまっすぐ立ち、根元から先端まで徐々に細くなっていく直幹。いわゆる”こけ順”のよさが求められる。根は四方八方に広がり、均整がとれた枝が前後左右に順序良く伸び、すべての樹形の基本といわれる。

 山野に立つ一本松や杉林の大木を盆上に表現したもので、きれいなタケノコの姿が理想とされる。

こけ順のいい直幹の黒松=高松市国分寺町、小比賀園芸

 高松市国分寺町、小比賀園芸の小比賀啓司さん(56)は「平成5年に亡くなった父が直幹好きで、山採りのこの木を愛培していた。それだけ思い入れもあり、大切に育てている。地域の皆さんの指導で、平成7年の共進会のときより根張りや皮性が格段によくなっている」と話している。

自然の風趣

 直幹に対して幹全体が左右どちらかに傾いているものが斜幹。長年の風雪に倒されかかった木々が、強い生命力で生き続ける姿を表している。

 安定感からすると、傾いた反対側に強い根張りのあることが望まれる。整姿のときに傾いている方の枝は大きくせず、幹の流れを強調すると、いい樹形が実現する。美しい三角形を描く直幹に対して、左右に大きく傾く個性的な姿には根強い愛好家が多い。

 高松市鬼無町、出上吉洸園の出上文雄さん(58)は、推定樹齢約150年の斜幹の赤松を育てている。幹肌の舎利が見事だ。

幹の舎利が美しい斜幹=高松市鬼無町、出上吉洸園

 出上さんは「以前は模様木だったが、ひらめくものがあり、一本の枝を残して斜幹に改作した。元の木とは全く違うが、越前海岸の防風林のように左からの風を感じる姿に仕上がった」と賛美している。

(ライター・羽野茂雄)