赤松(3)山採り 風雪に耐え深い味わい
山採りの自然の赤松は、いいものがほとんど掘りつくされたようだ。山に入って松を探す人も減り、盆栽園の棚場でも山採りの赤松は激減、貴重品扱いになっている。
自然の赤松を慈しむ
香川県高松市国分寺町、愛松園2代目の佐々木功さん(72)も例外ではない。「今はもう出て(売れて)しまって、取材してもらうような赤松はないで」と苦笑する。
ところが、棚場を見せてもらうと、山採りを鉢に上げて5年ほど経(た)った赤松がある。樹高約80センチ、自然の妙味があふれ、幹には赤松特有の赤みの片りんが見える。大切に育てている一鉢だ。
佐々木さんは山採りの話になると「山の赤松は古さがあり、実生とは風情が全然違う。長年の風雪に耐えてきただけに、何とも言えん味わいがある。文人調に仕立てると、それは見栄えがいい」と途端に相好を崩す。
自慢の創作もの
佐々木さんは高校卒業以来、50年以上の栽培歴を持つ。ところが、中学3年の時に父明義さんを亡くしたため、手ほどきを受けた記憶はない。独学で盆栽作りに励んできた。「盆栽が好きやからできた。50年経った今も変わらない」と述懐する。最近は黒松の小品を主に手がけている。
佐々木さんは、若いころから創作もので高い評価を得てきた。錦松の新品種を開発したこともある。数々の表彰状にも金賞や銀賞に交じって「創作賞」の字が輝く。
佐々木さんの自慢は、生まれる1年前の1934(昭和9)年に東京で開催された「第1回国風展」の写真帖(ちょう)を持っていること。昭和30年代に高松の古本市で手に入れたそうだ。創作意欲の強い佐々木さんらしい宝物である。
(ライター・羽野茂雄)