五葉松(4)那須五葉を培養 欧米でも評判の姿と形
鬼無、国分寺の五葉松は銀八ツ房が大半を占めている。台木にする黒松との相性のよさから手がける栽培者が多いが、那須五葉や夢の樹種とされていた「瑞祥」の培養に挑戦する人もいる。
愛好家に学ぶ
香川県高松市国分寺町、山松園の山地宏美さん(55)は語学が堪能で、欧米への盆栽輸出も行っている。
山地さんは自園で黒松、五葉松などを育てている。五葉松はやはり銀八ツ房が中心だが、栃木、福島両県にまたがる那須連山に生育する那須五葉松や瑞祥の培養にも取り組んでいる。「愛好家の遊び感覚に学んだ取り組み。商売になるかどうかは別問題だが、やってみる価値はある」と話している。
五葉松に限らず山採りの松は枯渇気味である。実生は最初から人の手で作るためクローン苗ができるが、種子の入手が容易ではない。そこで山地さんは関東から那須五葉の成木を入手し、穂木を採る親木(マザー・ツリー)として、接ぎ木による培養を行おうとしている。
五葉松は五葉松に接ぐのが理想だが、これまた入手が難しく、銀八ツ房同様、黒松の2年生の台木に接ぐことにしている。山地さんは「銀八ツ房のように黒松になじんでくれたらいいが」と期待している。
輸出OKは五葉松だけ
山地さんが五葉松に力を入れるのにはもう一つの理由がある。それは、欧米への輸出が許可されている松は五葉松だけだからである。栽培者の多い黒松は認められていない。錦松もしかり。
「五葉松は姿形がやさしくきれいだから外国でも評判がいい。しかし、なぜ五葉松だけ輸出がOKなのかわからない。ぜひ、黒松も認めてもらいたい」と山地さん。
面白い話も聞いた。北米では日本のように小まめな剪定[せんてい]の習慣がないため、せっかく繊細に仕立てた盆栽も時間とともに大きく育って、五葉松の葉も長くなるという。盆栽を自分の子どものように、大切に育てて日々の世話を欠かさないのは、日本ならではの美徳のようだ。
(ライター・羽野茂雄)