五葉松(1)魅力と特徴 「女王」の気品を備える
葉の短さや樹形の優美さから、「ヒメコマツ」の別名もある五葉松。ほかの松は葉が2本だが、五葉松は5本ある。日本特産種で、大きいものは樹高30メートルにも達する。強健で仕立て方はさまざま、管理の手軽さから松盆栽の人気樹種となっている。黒松の風格が盆栽の王様なら、五葉松はさしずめ盆栽の女王としての気品を備えている。
銀八ツ房
高松市の国分寺、鬼無の盆栽どころで育てている五葉松は、ほとんどが「銀八ツ」「銀八ツ房」の通称で親しまれている種類だ。葉が銀色で芽がたくさん出ることから、こう呼ばれる。きれいな短い葉も特徴である。
同市国分寺町、蒼樹園の小早川義視さん(58)は、この道およそ40年、銀八ツ専門に取り組んでいる。小早川さんは「銀八ツは接ぎ木でしか培養できないが、とにかく葉性がいい。葉の腰が強くて、くっきり銀色が浮いている。若木のうちに一度形ができあがると、黒松のように暴れず、姿が崩れにくい。ほかの松と比べると、水やりや施肥の手間も少ない。直幹、模様木、文人木、石付き、懸崖など樹形も自在に楽しめる。万人向きの作りやすい品種だ」と話している。
年間の作業は、冬場に葉すかし、針金かけ、畑からの掘り取りと仮植えを行い、春に接ぎ木や鉢上げをする。接ぎ木は主に二年生の黒松が台木となる。夏は秋の出荷に備えて古葉取りをする。
温暖化はピンチ
五葉松は四国の山では「石鎚五葉」「赤石五葉」、瓶ヶ森に自生するものなどが知られているように高山性の松である。そのため比較的寒さには強いが、夏の暑さは苦手である。念入りな葉すかしを行い、風通しをよくすることが肝心だ。
小早川さんは「近年のように暑い夏が続くと、大切な葉が日焼けして落ちてしまうことがある。地球温暖化の影響ですかね。夏越しが大変です」と心配している。
(ライター・羽野茂雄)