黒松(4)新品種「寿」 樹形のよさで人気続く
黒松の新しい品種「寿」。高松市鬼無町の中西珍松園三代目、中西輝哲さん(67)が生みの親とされている。今年の第25回きなし盆栽植木まつりでは、中西さん所蔵の樹齢50年以上の寿が出展され、来場者のため息を誘っていた。
鬼無生まれの縁起物
黒松寿は1970年ごろ、高松市国分寺町の山で親木が見つかった。その素性のよさに引かれた中西さんは芽をとって接いでみた。すると質のよい苗木ができ、仲間たちとともに縁起のよい「寿」と命名した。時はまさに盆栽ブームで、新品種の寿は引っ張りだこの人気を博した。苗木は鬼無から遠く関東へも出荷された。
やがて爆発的ブームは去るが、樹形のよさが評価され、静かな人気が続いている。
短い葉が特徴
黒松寿の最大の特徴は、短い葉である。普通の黒松の半分以下の約1・5センチが標準。さらに葉が密で、まっすぐに伸び、緑が濃いのも持ち味だ。これは松全体の理想とされるが、そのすべてを備えた優れた品種と言える。
実生ではできず、すべて接ぎ木で作るが成長が遅く、ある程度形になるまで10年はかかるそうだ。4―5年に一度植え替えると、枝ぶりが締まり、根張りもよくなってくる。肥料も水も大量に必要で、6月の芽切り、冬の葉すかしなど、手間も多い。
中西さんは「根気よく手入れすれば樹形がよくなり、手をかけた分だけ木が応えてくれるのが楽しい」と寿の魅力を話している。
天皇陛下がご覧に
93年10月、東四国国体のためにご来県された天皇陛下が栗林公園でお休みになられた折に、ご覧いただいた寿が中西珍松園にある。親木の樹齢は250年とも言われる古木だ。
中西さんは、この記念すべき寿を丹精して育てている。陛下にご覧いただいてから14年、手入れを重ねた分だけ、当時よりさらに風趣を増しているそうだ。
(ライター・羽野茂雄)