冬場の手入れ 子ども同様手間かける
秋の展示会シーズンが終わると、盆栽は表舞台から一歩退いて、棚場で静かに春を待つことになる。栽培者にとっては、美しい春を迎えるために、この季節にも大切な仕事が山積している。
古葉の除去と葉刈り
秋の終わりから翌年3月末くらいまで、松盆栽は冬の手入れの時期となる。時間がかかるのが枯れた古葉の除去。葉の短い五葉松は手で触ると落ちる場合もあるが、黒松は一つ一つピンセットで取り除く細かい作業となる。
高松市国分寺町の吉原慶松園では、日だまりの中、園主の吉原雅韶さんが黒松の古葉を落としていた。「小さいもので1時間、大きいものだと2時間。人間の子どもとつい(同じ)で、鉢の数だけ手間がかかる」と吉原さん。
7、8センチ以上に伸びた葉を半分ほどに切りそろえる葉刈りも大切な作業だ。葉が長いと針金をかけるときの支障になり、込んでいると害虫もつきやすい。葉を切るとヤニが出るため、2週間ほどおいて次の作業にかかるそうだ。
針金かけ
針金かけは木が休眠する冬場の仕事だ。一本一本姿形の違う木に、神経を集中して針金をかける。吉原さんによると、売り上げまで左右する作業で、技術が要求されるところだ。針金かけは栽培者の個性が出るため、他人に渡っても誰が育てた木か分かるとも言われる。
針金はかけてから1年ほどで幹に食い込み始め、その部分から外していき、2年くらいですべて取り除く。こうしておくと、5年ほどは美しい姿が保てるという。
細かく地道な作業
冬場の手入れは、古葉取り、葉刈り、針金かけなど細かい作業が多い。しかし、盆栽が美しい姿を保つために、どれも欠かせない。
栽培者たちの隠れた努力が3カ月ほど続いた後、春の植え替え、鉢上げなどを経て、盆栽が再び輝く時期を迎える。
(ライター・羽野茂雄)