接ぎ木の技術 ベテランから若手に伝授
以前は多くの盆栽園で行っていた接ぎ木。最近はする人も減り、技術が途切れることが懸念されている。そんな折、香川県高松市国分寺町の綾松園、綾田正さん(74)のもとで、長男の綾田正人さん(50)と同町の春松園、平松浩二さん(42)が接ぎ木の技術を学んだ。
資源枯渇を防止
正さんは接ぎ木歴30年近いベテラン。この日二人に教えたのは、実生の黒松2年生の台木に赤松蛇の目の穂木を接ぐ技術。蛇の目は穂木が長く、初心者にも比較的簡単だという。
低接ぎは、台木の根の生え際に斜めにナイフで切り目を入れて接ぐ。高接ぎは、台木の先端をナイフと手で割いて穂を差し込む。イ草のひもで縛って固定すると完成。これをポットで来年秋まで培養して出荷する。活着すると今年5月にもロウソク(芽)が出てくる。
接ぎ木は、実生や挿し木が難しい場合に用い、親木の性質をそのまま受け継ぐ木ができる利点がある。将来の資源枯渇を防止できる技術と期待されている。
とにかく経験
正さんは鮮やかな手つきで接ぎ木を行う。教え方も絶妙だ。「接ぎ木は人体の移植と同じ大手術だが、人体にも樹木にも自ら生きようとする力があり、意外とつきやすい。とにかく数をこなすこと」と教える。
惜しげもなく後進に技術を伝える正さんは「盆栽の将来にも、資源が豊富にできる接ぎ木の技術継承は大切です。特に若い人が覚えてくれるのは大事なことです」と喜んでいる。
習った二人は、一本一本丁寧に接ぎ木を仕上げ、徐々に様になるようになった。正人さんは「ずっと父の接ぎ木作業を見てきたが、やるのは初めて。穂を切る角度が難しい」、平松さんは「穂を切って素早く接ぐ熟練の技に感動しました。大事な技術なので、もっとうまくなりたい」と話している。
(ライター・羽野茂雄)