道具のいろいろ(下)職人芸の継承今後の課題
今回も香川県高松市鬼無町、中西珍松園5代目の中西陽一さん(42)に盆栽道具の話を聞いた。樹形を大きく変える改作のときに使う幹や枝を曲げる道具、自ら作ったシャリやジンを彫刻する道具を見せてもらった。いずれもプロならではの専門的な道具である。
荒技を支える
道具写真の右2点は、改作するときに使う「幹や枝を曲げる道具」である。かじ屋にあつらえたオリジナルで、特に名前はないそうだ。太い幹を曲げたり、向きを変えたりするときに欠かせない。枝が折れる直前まで曲げる樹(き)に無理のかかる荒技だけに、養生には気を配る。針金を掛け終えると、直ちに道具を樹から外すようにしている。
写真左の2点は、中西さんがドライバーを曲げて自作した。ジンやシャリを彫刻するときに使う道具である。長い栽培経験から「こんな道具があればいいな」と生まれたものだ。これを使うと奥まった幹や枝にも彫刻が施せるという。
改作はだいご味
新木を見て、どうすればいい樹になるかを見抜き、樹の一番の見どころを引き立たせる。また、まっすぐな幹や枝に角度を付けて顔を作る。いずれも改作である。中西さんは、改作にだいご味を感じ、数々の名品を生み出している。樹が休眠する11月から春先までが改作の好期となる。
道具にこだわる中西さんは、時代背景から一つの懸念を抱いている。それは道具を作る職人の減少である。盆栽に向く常滑焼の鉢も、職人の減少で少なくなっているという。盆栽道具を作るかじ屋も需要減の波を受けてどんどん減っている。「盆栽は樹だけでは成り立たない。手になじむ道具があり、鉢合わせを楽しむ鉢があってこそ、名品となる」。職人芸の継承を願っている。
(ライター・羽野茂雄)