水やり 渇きと湿り メリハリ大切
盆栽の水やりは、人間が食事や水分を取るのと同じように、1日たりとも欠かせない重要な作業である。業界では「水さえ欠かさなければ枯れることはない」とも言われる。生きた樹木には、細かい気配りも必要だ。特に、暑い夏場の水やりはひときわ気を遣う。
夏は毎日2~3回
香川県高松市鬼無町の中西珍松園を訪ねた。正午ごろ、5代目の中西陽一さん(41)が、日課の水やりに励んでいた。松柏盆栽は、夏は毎日2、3回、春秋は1回、冬場は2日に1回水を与えている。毎日が地道な世話の繰り返しである。樹齢50年、100年以上も珍しくない盆栽、いったいどれほどの水を与えてきたのか、想像を絶する量だ。
夏場はたっぷり水を与える。最も暑いこの時期、松は葉水も施す。樹(き)にも癖があり、同じ樹種でも乾きやすい樹とそうでない樹があるそうだ。置き場所を変えたり、樹を選んで水を与える”拾いかけ”を行うこともある。
腰水は鉢の3分の1
水やりが難しいのは、雑木が葉を落とす冬場と梅雨時。冬場は枯れたような風情になるが、水やりを怠ると、本当に枯れてしまうから要注意だ。雨は意外と鉢にしみ込まない。中西さんは「梅雨は傘をさしてでも水をやれ」の格言もあると教えてくれた。
水やりをする時、「どれも均等に与えるのではなく、それぞれの状態をよく観察する心が大切です」と中西さんは強調する。弱っている樹には、水がきれやすいよう鉢を斜めにしてかける工夫もしている。
常に鉢の土が湿っているのはよくない。渇きと湿りのメリハリが必要だ。「乾いたらやる」のが原則。旅行などで留守にする場合、腰水をすることがあるが、水は鉢の3分の1以下に抑えないと根腐れの原因にもなる。心したい。
(ライター・羽野茂雄)