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盆栽入門

基礎知識や普段の手入れ、鑑賞のツボ…盆栽の「いろは」をプロが解説します。

鉢のいろいろ 樹種、樹形によって選択

2009年11月28日

 盆栽の盆は鉢、栽は樹木を指す。樹木と鉢の調和は、書画と表装のような関係にある。本格的な盆栽展では樹種と併せて鉢も紹介される。香川県高松市鬼無町、松田清松園の松田三男さん(36)に鉢の種類を尋ねた。

仕立て鉢と化粧鉢

 盆栽の成長とともに鉢も変わっていく。樹木が若いときは仕立て鉢と呼ばれる素焼きの鉢を用いることが多い。ホームセンターにも並んでいる赤みがかったもので、通気、排水、保水などに優れ、根の発育がよく樹木の成長も早い。

 樹木が成長すると、化粧鉢という観賞用の鉢に植え替える。樹種や樹形でさまざまな選択肢があり、鉢合わせがよければ盆栽としての価値が高まってくる。

釉薬ものと泥もの

広東丸(左)と海鼠長方(右上)、白交趾(右下)
広東丸(左)と海鼠長方(右上)、白交趾(右下)

 鉢は大きく分けて釉薬ものと、釉薬(ゆうやく)のかかっていない泥(でい)ものに分類される。釉薬ものは鮮やかな彩りが特徴で、産地などで交趾(こうち)(ベトナム北部地方の古名)、広東、南京などの名称や、見た目から海鼠(なまこ)、均釉(きんゆう)などの種類がある。

古渡り烏泥丸
古渡り烏泥丸

 泥ものは落ち着きや重厚さがあり、主に松柏類に向くとされている。胎土や焼き上がりによって、朱泥、紫泥、烏泥(うでい)、紅泥、白泥などと呼ばれる。

 日本でも江戸時代以前から盆栽鉢は作られていたが、それより古い中国鉢を珍重し多用してきた。古い順に「古渡り」「中渡り」「新渡(しんと)」「新々渡(しんしんと)」と呼ばれている。古渡りは一世紀ほど前の清朝末期までに作られたもので、高級品とされている。中国では、高貴な人の墓の副葬品として使われていた。中渡りは、明治中期から大正に入ってきたもので広く出回っている。新渡は大正末期から昭和、新々渡は戦後に日本に入ってきたものを指す。

小品盆栽の飾り鉢・京極士苞[しほう](左3点)と作家ものの舟山
小品盆栽の飾り鉢・京極士苞(しほう)(左3点)と作家ものの舟山

 和鉢の代表的なものは、常滑、信楽、備前、瀬戸など。東福寺、涌泉(ゆうせん)、舟山(しゅうざん)など有名作家の手になるものは、熱い支持を得ている。

 (ライター・羽野茂雄)