展示(下)おもてなし 国際化への対応も視野
香川県内に数ある盆栽園でも、展示が際立つのは高松市鬼無町の中西珍松園だ。広々とした棚場、門構えからアプローチ、床の間など日本料亭を思わせるような美しい展示は、愛好家や業者の注目を集めている。5代目、中西陽一さん(41)にこだわりを聞いた。
ゆったり感を重視
全国の若手盆栽作家たちが加盟する「西風会(せいふうかい)」の副会長を務める中西さんは、考え方が斬新だ。初めての人も親しめる「おもてなし」の気持ちを大切にした作品展示を模索してきた。外国人の来園も日常化し、国際化への対応も必要だ。
そこで、従来の棚状ではなく、1本1本ゆったり並べる見せ方を考えた。黒松寿の功労者として知られる父の4代目の輝哲さんに相談すると効率や生産性の観点から色よい返事はもらえなかった。しかし、将来の方向性を粘り強く議論して理解を得て、2004年の全面改修に漕ぎ着けた。
床の間「遊行庵」では、絶妙の季節感が客を迎えている。緑したたる石付きのカエデに、高僧の手になる滝の軸、それを眺める木彫りの老人を配した夏飾りは心憎いばかりである。
来園者も多彩に
海外から盆栽愛好家が来ると、きまって珍松園を訪れる。高松市内の名所や旧所などを巡る「まちかど漫遊帖」のコースにも入っている。盆栽業者や県市の観光関係者は2011年秋の第11回アジア太平洋盆栽・水石大会(ASPAC)の高松開催誘致を図っているが、第9回大会会長で、次期開催地決定のキーマンでもあるインドネシアのマック・パイマン氏も昨秋の来県時に同園を訪れ、展示を称賛した。
中西さんは、「ASPACは千載一遇のチャンス。ぜひ高松開催を実現して、盆栽の町鬼無・国分寺を世界にアピールしたい」と、張り切っている。
(ライター・羽野茂雄)