大型の改作 頭を悩ませ神経使う季節
香川県高松市鬼無町、中西珍松園5代目の中西陽一さん(43)に、大掛かりな改作を見せてもらった。樹は、山採りの赤松で、推定樹齢120年、樹高82センチの大型盆栽だ。こうした改作の場合、針金をかけて2年ほどおくと、幹の曲も安定し、作品として完成度が高まる。
ジャッキを使って
中西さんは、幹の絶妙な曲が持ち味だったこの樹の中間あたりがやや間延びしてきたのが気がかりだった。
幹や枝を左側に下げて樹を絞ると、曲の味が復活する。樹高も低くして頭を丸くすると、古木感がさらに引き立つと構想した。枝は、取り除くべき不要なものはない。
ただ、これだけ太い幹になると、針金だけでは間に合わない。中西さんは、ジャッキと太い銅線を使った改作を選択した。
大事な幹が折れないように、ラフィアの繊維で作ったひもを巻いて養生し、ジャッキを使って銅線をかける。何種類もの銅線で、先端まで絞り込んでいく。
向きも考える
赤松の古木が見事に変身した。樹高は10センチ低くなって72センチ。樹形が左に傾き、正面も変わり、引き締まって見えるようになった。
中西さんは、鉢の下に台をかませて、さらに左へ倒す技も加えた。来春3月の植え替え時期にこの角度で植え替えると、幹の曲に一段と風趣が乗ってくるのではとのアイデアだ。数年に一度の改作の時期は、作家たちが頭を悩ませる時だ。これほどの古木になると、ひときわ神経を使う。
中西さんは「ジャッキで幹が折れる寸前まで引っ張る荒療治です。ある程度は想像できるが、樹自身の力もあるので結果は冬の管理次第。焼き物にも似た楽しみがある。うまくいけばいいのですが…」と、大切に見守っている。
(ライター・羽野茂雄)