山地宏美さん(山地山松園)
山松園2代目園主の山地宏美さんは、子どものころから父の手伝いに励み、技術を磨いてきた。「当時は盆栽ブームのさなかで、跡を継ぐのが当然だった」と山地さん。山取りの木が豊富で材料には事欠かず、大都市圏から多くのお客が訪れ、金刀比羅宮参道の土産物屋にも鉢がずらりと並んでいた時代。盆栽文化が活気づいていた。
2代目園主となってからは、サイトを開設し通信販売を導入するなど、時代に即した新しい販路を模索。インターネットを通じて顧客層は世界に広がった。多様化する要望に応えてさまざまな樹種を手広く扱うようになり、海外からの注文も増えている。
マツで唯一欧米に輸出できる五葉松は優しい姿で人気が高く、山地さんが力を入れている樹種だ。五葉松づくりには定評があり、接ぎ木による「那須五葉」「瑞祥」などの培養にも挑んでいる。
年に数回は国内外に出かけ、ネットワークの強化を図っている。盆栽が「BONSAI」として世界に知られ、インターネット上で国際的な品評会なども開かれる時代を迎えている今、数十年先を見通して産地の伝統と技術を発信する必要を感じているという。その一環として、語学力を生かし地元のイベントで外国人向けの盆栽講座を開いたり、海外で盆栽を指導することもある。
盆栽は時間がかかるビジネスだという山地さん。「各地に特徴のあるものをつくる園が増え、国内外のネットワークが広がるといい。私もどんな要望にも応えられるようデータベースとしての知識を養い、見識を広めていきたい。日本中の園を全部巡るのが夢」と語っている。